抄録
本研究は, 滑落までの調査データの揃った奈良県大塔村で発生した地すべりによる道路災害を例に, 地すべり現象の運動特性と災害の特徴を整理し, リスクマネジメントの概念を地すべりへ適用した。災害発生後の危機管理としての地すべり被害軽減には, 綿密な現地調査に基づく崩壊予測が有効であることを示した。現状では事前のリスク管理の認識が希薄であることを指摘し, 地すべりリスクマネジメントの実施フローを提案した。地すべり災害の間接的影響の1つである風評被害による周辺地域の観光損失を約15億円と試算し, 直接的影響に加えて間接的影響も地すべりリスクマネジメントの重要な要素であることを示した。