日本下肢救済・足病学会誌
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Ⅱ 下肢救済・足病の現状と将来
ⅲ)透析者における末梢動脈疾患
小林 修三
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2009 年 1 巻 1 号 p. 41-46

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抄録

要旨:透析患者の下肢末梢血管障害(peripheral artery disease: PAD)を理解する重要な理由は,その高い発症率と下肢切断を介し生命予後をも脅かす可能性が高いことにある.透析患者の下肢切断率は年々増加傾向にある.下肢切断率は,わが国では2000年末には透析患者全体の1.6%であったが2005年末には2.6%と増加し(24万人中4755人),その70%は糖尿病透析患者である.また,透析患者の死亡原因は,第 1 位心不全(25.8%),第 2 位感染症(19.2%),そして第 3 位脳血管障害(9.8%)であるが,PAD患者の死亡は,併存する心脳血管障害や低栄養,潰瘍壊死部からの感染症によるものが多く,上記第 1 位から第 3 位のいずれかに登録される場合がほとんどである.死亡の原疾患としてのPADは見逃されやすいが,透析患者の下肢切断術後の生命予後を検討すると,心筋梗塞に劣らずその予後が著しく不良である事が理解できる.前述のごとく,透析患者では下肢切断後の生命予後が著しく不良となるため,少しでも早期に疾患を診断し適切な治療を行なう事が重要である.

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© 2009 日本下肢救済・足病学会
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