管理会計学 : ⽇本管理会計学会誌 : 経営管理のための総合雑誌
Online ISSN : 2434-0529
Print ISSN : 0918-7863
論文
経営者の開示戦略が投資家の情報獲得行動および企業価値に与える影響
山口 貴史
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2018 年 26 巻 1 号 p. 23-41

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抄録

近年,経営者は企業価値を高めることを目的として情報開示を行う傾向にある.しかし,なかには情報を開示しない経営者も少なからず存在する.このような経営者の情報開示戦略について製品市場においては議論されてきたが,資本市場においては,どのような状況で経営者が情報を非開示にするかについて議論されつくされているとはいえない.本稿においては,資本市場においてさまざまな情報を保有する経営者の情報開示戦略について企業価値の観点から理論モデルを用いて分析することを目的とする.特に,企業価値を最大化するための経営者の投資活動に焦点を当てた上で,複数の情報および投資家の情報獲得行動を考慮し経営者の情報開示戦略を検討する.本稿においては,経営者が自発的開示を行う状況を示す一方で,経営者が情報を自発的に開示しない状況があることを併せて明らかにした.この結果は,投資家の情報獲得行動が要因となっている.経営者が自発的開示を行わないとき,投資家は情報を観察することで市場参加者に対し情報優位に立つことができるので情報獲得インセンティブがあり,そのことによって企業価値の増加につながる.

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© 2018 日本管理会計学会
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