管理会計学 : ⽇本管理会計学会誌 : 経営管理のための総合雑誌
Online ISSN : 2434-0529
Print ISSN : 0918-7863
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論壇
  • 潮 清孝
    2025 年33 巻2 号 p. 3-13
    発行日: 2025/03/28
    公開日: 2025/04/08
    ジャーナル 認証あり

    本稿では,AIやデジタル技術が管理会計や会計教育に与える影響について考察する.AIの急速な進歩に伴い,会計士の役割は,判断や助言といったより価値の高い業務にシフトしつつある.さらに,MFM(Multimodal Foundation Model:マルチモーダル基盤モデル)に代表される近年の発展は,AI技術をより容易に活用することを可能にしている.一方で,実務レベルで適用されるAI技術の多くは,目的が明確または限定された業務の中で,いわゆる狭義のAIによって業務を代替または支援することに留まっており,倫理や価値観を伴う高度な判断や意思決定においては,AIの利用は限定的であることが分かった.

  • 林 尚史
    2025 年33 巻2 号 p. 15-21
    発行日: 2025/03/28
    公開日: 2025/04/08
    ジャーナル 認証あり

    ソニーの経理部門におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みについて紹介する.経理業務の自動化を目的に,2016年からロボティクス・プロセス・オートメーション(RPA)を導入し,年間約15,000時間の経理業務を自動化している.RPAの導入により,決算業務のスピードと精度が向上し,効率的な業務運営が実現していたが,2021年からは中期計画にテクノロジーと人材育成を組み込み,2022年夏にはDX推進課を設立した.具体的なツールとしては,BIツールのTableauと優れたETL機能(データの収集・加工・送出)を持つAlteryxを活用し,業務の効率化とガバナンス強化を図っている.Tableauは経理業務の各プロセスで活用され,データの可視化と分析を支援している.Alteryxは大量データの高速処理を可能にし,手作業によるエラーを削減している.今後は,AI技術の活用やデータの自動化を進め,経営判断に資する情報提供を目指す.特に,生成AIやAI-OCRの導入により,さらなる業務効率化と高度な分析が期待される.

  • 堀井 悟志
    2025 年33 巻2 号 p. 23-35
    発行日: 2025/03/28
    公開日: 2025/04/08
    ジャーナル 認証あり

    本論文では生成AIを含むデジタル技術の進展が管理会計に与えうる影響を定性的研究に基づいて検討している.デジタル技術を専門とする実務家への聞取調査からは,今後,連携した統合的なデータベースの活用と,AI活用を前提としたプロセスの構築が進むことが示唆された.管理会計で考えると,会計情報と管理情報を統合したデータ分析が進むことで,従来の予実差異分析に基づく課題特定から,会計業績に影響を与える管理情報の直接的な特定へと変化する可能性が示唆される.また,実際に,日清食品では,生成AIと統合データベースを用いた自動レポーティングが試行されており,このような変化により,管理会計プロセス自体も変化する可能性がある.AIによって業績分析までもが自動化される可能性があるなかでは,管理会計人材の育成においても,データベースの構築,業績分析・報告の設計,そして結果の解釈や創造的な提案に重点が置かれるようになると考えられる.

  • 上野 雄史
    2025 年33 巻2 号 p. 37-50
    発行日: 2025/03/28
    公開日: 2025/04/08
    ジャーナル 認証あり

    本論では,AIおよびDX時代における職業と会計専門職の変化を論じ,会計データサイエンス教育の必要性と課題を明らかにする.DX推進によりデータ活用とAI実用化が進展し,大規模言語モデル(LLM)などの生成AIが多様な分野で活用されている.特にAIは,意思決定やデータ処理などを効率化し,業務プロセスの変革をもたらしている.一方,AIの活用にはブラックボックス性や説明可能性の課題が伴い,これを克服する専門職のスキルが不可欠である.AIとの協働は,自動探索,逐次探索,対話型探索のいずれの場合でも,法規制や会計基準を理解しつつ,AIの結果を実務に活用する能力が求められる.これに対応するため,包括的かつ実践的な会計データサイエンス教育プログラムの構築が必要である.

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