2000 年 8 巻 1-2 号 p. 169-175
キャッシュフローの重視が日本企業にも浸透しつつある.しかし誤解されていることも多いようだ.例えば,単なる運転資本の効率化,資金の集中管理または不採算事業の整理だと捉えられたりしている.我々はキャッシュフロー重視の経営とはバリュー・ベースト・マネジメント(企業価値経営)と同義と考えている.それは,戦略的意思決定や業務的意思決定において企業価値増大という判断基準を適用することである.これによって自社の価値増大に向けて,企業全体のベクトルを揃えることができる.
顧客の長期戦略構想策定において,我々はシナリオ・エンビジョニングというアプローチを使うことがある.これは劇的な事業環境変化に直面している企業に特に有効な方法である.まず顧客と共に将来の事業環境に関する複数のシナリオを作成する.そして現状の事業モデルが新たな環境で有効に機能するか否かを評価する.そして新たな環境に対応するための事業モデルの構想を策定する.この過程で,環境変化の影響評価および戦略代替案の経済的効果定量化のために企業価値分析を実施する.
さらに企業価値増大の現実化には,戦略だけではなく事業運営が重要である.企業のあらゆるレベルの構成員を企業価値増大に向けて動機付けることが望まれる.そのためには期間業績を的確に測定する評価指標が必要となる.EP(Economic Profit)はその目的に適した指標である.