管理会計学 : ⽇本管理会計学会誌 : 経営管理のための総合雑誌
Online ISSN : 2434-0529
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論文
企業の投資行動と業績評価
佐藤 紘光
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2000 年 8 巻 1-2 号 p. 17-31

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抄録

所有者の立場からすると,企業の投資は現在価値法や内部利益率法などの合理的ルールに従って,株主価値が最大化されるように決定されるべきである.しかし,経営者や管理者はこの基本ルールを無視して株主の選好とは異なる意思決定を行う場合がある.エイジェンシー理論はその理由を経営者や管理者(エイジェント)が株主(プリンシパル)の利益よりも自分自身の利益を優先するインセンティブをもつからであると説明する.エイジェントの投資決定をコントロールするインセンティブ・システムを構築することが業績管理会計の重要課題となる所以である.

本稿は,このような視点から,経営者や管理者に効率的投資決定を動機づける報酬体系(業績評価システム)のあり方を論じる.最初に,Holmstrom and Ricarti Costaのエイジェンシー・モデルに数値例を当てはめて管理者の投資行動を分析する.そして,効率的な投資決定を動機づけるには,長期(2期間)の雇用関係を自己選択させる業績連動型の報酬体系が必要となることを明らかにする.ついで,モデル分析の含意を用いて,経営者のキャリア・コンサーンが投資決定の効率性を歪めるプロセスをいくつかのケースで説明する.そして,企業価値を測定する業績尺度を報酬体系に結びつける必要性を再確認し,業績評価尺度としての株価や会計利益,経済付加価値などの意義を検討し,経営者報酬との連動性について言及する.

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© 2000 日本管理会計学会
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