哺乳動物学雑誌: The Journal of the Mammalogical Society of Japan
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ムササビの採食活動
船越 公威白石 哲
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1985 年 10 巻 3 号 p. 149-158

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抄録

福岡県英彦山銅鳥居付近に生息するムササビの採食活動について, 特に日周期活動, 年周期活動, 被食樹種の季節変化などを1975年の秋から1978年の春にかけて調査し, かつ飼育下で活動リズムを解析した。
1.出巣開始時刻は日没の平均35分後で, 気温の影響を殆ど受けなかった。帰巣終了時刻は日の出の平均53分前であった。しかし, 両時刻には個体差が見られた。
2.夜間の活動パターンは出巣後の数時間と帰巣終了前の数時間にピークを示す2山型で, その間に長い休息が見られた。悪天候の日には, 出巣直後の短時間の活動に止まるか, あるいは巣外活動を停止した。
3.野外観察や飼育下での活動解析の結果から, 採食活動は上記の活動時間帯に集中する2山型と知られたが, 特に日の出前の第2の山において盛んであった。
4.調査地内の食餌植物は9種で, 周年にわたり利用された常緑木のウラジロガシの葉を除き, これらの被食部位は季節に応じて変化した。また, 食餌植物の分布とムササビの行動域とはほぼ重なり合っていた。
5.ムササビの葉食性への適応は, 体の大きさ, 夜間の採食活動パターン及び行動域の広さに反映されていることが明らかにされた。

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