北海道におけるウスリードーベントンコウモリMyotis daubentoni ussuriensis OGNEV, 1927の新産地と, 外部及び頭骨形質の変異性

抄録

ドーベントンコウモリMyotis daubentoni (35雄23雌) が新たに北海道の網走郡女満別町女満別, 斜里郡斜里町, 河東郡糠平町, 同郡然別, 空知郡北村及び天塩郡豊富町稚咲内から記録された。これら標本の外部形質と頭骨形質の計測値について性差及び地理的変異を調べ, 更にこれらの計測値を樺太, 朝鮮半島及びエトロフ島産のウスリードーベントンコウモリM. d. ussuriensisの計測値と比較した。北海道産標本では全形質について雌雄差は見られなかったが, 頭骨の長さに関する計測値及び脳函高において各個体群間に地理的変異の傾向が見られた。また, 北海道内各個体群と樺太, 朝鮮半島及びエトロフ島産のウスリードーベントンコウモリとの間には脳函高を除いて有意差は認められず, 北海道産はウスリードーベントンコウモリである。