哺乳動物学雑誌: The Journal of the Mammalogical Society of Japan
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筑後川河原 (久留米市) に生息するハタネズミの生態
第1報性比, 娠妊期, 胎児数
白石 哲
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1967 年 3 巻 3 号 p. 57-63

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抄録

福岡県久留米市長門石地区の筑後川高水敷で1965年3月から, 1966年6月にかけて野鼠採集を行ない, ハタネズミ58頭 (雄26頭, 雌32頭) を得た。同じ場所で1960年から1961年にかけて得られた63頭を加えた121頭の個体を材料に, 性比, 妊娠期, 1腹胎児数について調べた。結果は次の通りである。
1) 性比は雌61頭に対して雄60頭で100: 98.4となり, 雌雄数に差はみとめられなかった (Fig.2) 。
2) 本州産ハタネズミでは冬季の繁殖は見られないのに, 九州産のものでは冬季にも妊娠個体が得られる。また夏季には妊娠個体が出現しない。すなわち妊娠率を季節別に求めると春 (3~5月) は51.6%, 夏 (6~8月) 0%, 秋 (9~11月) 45.5%, 冬 (12~2月) 50%となる (Table 2) 。
3) 九州産のものの1腹胎児数は2~8頭 (平均5.0頭) で, 従来報告されている本州産のそれとの間に差はみとめられなかった (Table 3) 。
4) 萎縮胎児が4.8% (左, 右両子宮角内に見出された胎児総数に対する萎縮胎児数の比) みとめられたが, 左, 右子宮角内の正常胎児数には差がなかった (Table 3) 。
本論文の要旨は第19回日本動物学会, 第16回日本植物学会, 第11回日本生態学会九州支部 (地区) 合同大会 (1966年5月21, 22日, 於九州大学) で講演した。

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