哺乳動物学雑誌: The Journal of the Mammalogical Society of Japan
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旭川産カグヤコウモリ, Myotis frater kaguyaeの繁殖習性
前田 喜四雄出羽 寛
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1982 年 9 巻 2 号 p. 82-87

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抄録
旭川市上川神社本殿で1980年7月19日に採集された成体雌59頭幼体90頭からなるカグヤコウモリ, Myotis frater kaguyaeの繁殖コロニーを調べ, 下記の知見を得た。
1) この繁殖コロニーは約150頭の成体雌からなっていたものと思われる。
2) 出産時期は6月中旬から7月下旬にかけて, かなりの幅をもって続くものと思われる。そこで, このコロニーの中に種々の大きさの幼獣および妊娠中の雌を含んでいた (表1と2) 。
3) 雌は出生後1年3~4か月で交尾し, 出生後2年で出産を始めるものと思われる。
4) 一腹の産仔数は1である (妊娠雌7例) 。出生仔は雌が雄よりやや多かった (雌54.6%) 。
5) 初生仔は前腕長17.0mmぐらいであり, 他の外部形質の測定値は表3に示されている。
6) 耳介と耳珠は出生時すでに立っていたが, 閉眼であった。しかし前腕長19.0mmより大きい幼獣では全個体開眼していた。
7) 乳歯は下顎ではi3対, c1対, pm2対であるが, 上顎ではi2対, c1対, pm2対であり, 出生時, 下顎乳臼歯の後方1対を除きすべて粘膜上に萌出していた。しかし, 前腕長が22.Omm以上の全幼獣ではすべての乳歯が萌えそろっていた。
8) 出生時, 口裂の周辺, 耳介の前縁と内側縁, および頸の周囲に0.5-0.8mmの毛が疎生している他には頭部と顔面には毛が生じていなかった。しかし, 前腕長が19.0mmぐらいの幼獣になると, 頭部と顔面に毛が密生し始めた。背側では, 出生時, 体への付着部付近似外の腿間膜および飛膜を除き, 各部に0.2-1.0mmの毛が疎生していた。しかし体の背側中心部では特に毛が少なかった。腹側では, 体腹側中心部と飛膜の大部分を除き, 0.3-1.0mmの細毛が疎生していた。前腕長19.0mmの幼獣になると体の腹側部と背側部に体毛が密生を始めたが, 体背側の毛の方が腹側のそれよりやや早く成長していた。
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