2022 年 91 巻 7 号 p. 426-430
我々の生活には欠かせない存在となっている半導体デバイスは,電荷キャリヤである電子と正孔が実空間,および,エネルギー空間を動くことで動作している.本研究では,電荷キャリヤの動的特性から半導体材料の評価,さらには,デバイスのオペランド観察を目的とし,フェムト秒パルスレーザーを光源とする光電子顕微鏡の開発を進めている.光電子顕微鏡を検出器とすることで空間分解能,パルスレーザー利用による時間分解能に加え,パルスレーザーの光子エネルギーを紫外光領域で連続的に可変にすることでエネルギー分解能が加わり,高いシグナル‐ノイズ比で伝導電子ダイナミクスのイメージングが可能であることを実証してきた.本稿では,本装置の動作原理を解説し,絶縁性の高い有機EL材料のHOMOとLUMO準位測定と,単一のSi量子ドット内の電子ダイナミクスを観測例として紹介する.