2021 年 30 巻 1 号 p. 14-24
高齢者施設ではリハビリや転倒予防を目的としたさまざまなプログラムが実施されている。その中でダンスは、運動療法、芸術療法の側面をもつ活動として注目されるが、筆者は立って踊ることが困難な高齢者でも参加可能かつ効果的なダンスプログラムについて検討してきた。本研究の目的は、高齢者施設において指導者と参加者が即興的に創造活動を行うダンスプログラムの特性について、そこで生成し得るコミュニケーションの在り方という観点から明らかにすることであった。
即興表現を含むダンスプログラムにおいては、指導者と参加者が対等な関係の下で間主観的コミュニケーションが成立し、前言語的な身体のかかわりによって、心身の活性化、BPSDの軽減、生活の質の向上が見込まれると考えられた。一対一の身体コミュニケーションは間主観的コミュニケーションの体験をもたらし、高齢者の身体感覚や身体感情の再活性化、社会性の向上につながる機会を内包していることが、即興表現を含んだダンスプログラムの特性であることが明らかになった。