2022 年 31 巻 1 号 p. 13-22
新型コロナウイルスの感染症拡大は、人間に潜在的にあった孤独感を浮き彫りにした。社会的ネットワークの欠如により、それまで活動において紛れていた、親密な関係性の欠如による情緒的孤独問題が浮き彫りになった。
以上のテーマを扱うために、まず、新型コロナウイルス感染症拡大前後から高齢者の孤立及び孤独についてなされている重要な研究において、孤独感を和らげるためにどのような提言がなされているかを概観する。次に、ドイツを代表する高齢者の心理学研究者の一人であるフィリップ(Sigrun-Heide Filipp)らが、危機的出来事に遭遇した高齢者の情緒的支援のあり方について、どのような考察をしているかを辿る。最後に、フランスのカルメル会修道女、リジューの聖テレーズ(Thérèse de Lisieux)の小さき道の思想、及びその思想に日本人とキリスト教の接点を見出そうとした、一人のカトリック司祭奥村一郎の論述を辿り、日本における情緒的支援の場の形成のための、ひとつの示唆を得たいと考える。