音楽表現学
Online ISSN : 2435-1067
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岡野貞一の旋律構造
作品特定の手掛かりとして
後藤 丹
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2010 年 8 巻 p. 49-66

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抄録

 岡野貞一(1878 〜 1941)はいわゆる文部省唱歌の代表的な作曲家とされている。しかし、『尋常小學唱歌』中のどの歌の作曲に関わったかについては不明な部分が多い。

 本稿では、まず、「合議制」による『尋常小學唱歌』の制作の過程を、近年になって東京藝術大学で発見され 2003 年に翻刻出版された『小學唱歌教科書編纂日誌』によって検証し、作曲に関しては岡野を含む 6 人の楽曲委員が基本的に独立して仕事をしたことを確認した。

 次に、『尋常小學唱歌』以外の資料から、他の楽曲委員 5 名および岡野が作った旋律を探し出し、比較・分析して共通の要素および岡野固有の作曲手法をまとめた。

 最後に、抽出した岡野旋律の特徴を『尋常小學唱歌』全 120 曲と照合し、曲同士の関連も考慮に入れつつ、《紅葉》《朧月夜》《故郷》《冬景色》《雁》《秋》《廣瀬中佐》《浦島太郎》《春が来た》《入営を送る》等については岡野作曲の可能性が極めて高いと推論した。

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