音楽表現学
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  • 通奏低音演奏、機能和声、そして指感覚を整合する試み
    三島 郁
    原稿種別: 原著論文
    2019 年 17 巻 p. 1-12
    発行日: 2019/11/30
    公開日: 2020/11/30
    ジャーナル フリー

     19世紀におけるドイツ語圏での「ゲネラルバス」という用語は、バロック期の「通奏低音」としてではなく、和声理論にも使われていた。その延長上にフーゴ・リーマン Hugo Riemann (1849–1919) は理論・実践書『ゲネラルバス奏法の手引き(ピアノの和声練習)Anleitung zum Generalbass=Spielen (Harmonie=Übungen am Klavier)』(1889–1917)を出版した。彼はそこでバロック作品の通奏低音についての説明や実践課題も多く載せながら、さまざまな記号を駆使して和声の機能面を強調する。

     本稿では、この『手引き』の内容を、リーマンのゲネラルバスの使用法や和声理論教育の方法の観点から分析し、彼のゲネラルバスの捉えかたを考察し、明らかにした。リーマンのゲネラルバス理論は、和音の縦の構成音を示すバロックの通奏低音の理論と、和音の横の流れを示す19世紀の和声理論という、一見逆のシステムをもつようにみえる二つの理論に対して、それらを鍵盤上で実践する指の動きで結びつけることによって整合性をもたせようとしたものである。そのゲネラルバス実践には、機能和声という条件の下でも、指感覚を重んじながら「正しい」進行をすることが求められている。

  • 自文化、伝統文化、古典に向けて
    石原 慎司
    原稿種別: 評論論文
    2019 年 17 巻 p. 13-32
    発行日: 2019/11/30
    公開日: 2020/11/30
    ジャーナル フリー

     唱歌はどこの文化的所産であるのか、これまで学術的な説明がなされてこなかった。その結果、教科書で唱歌が日本の文化として明示されていないばかりか、外国曲と並んで単なる歌唱教材のひとつの扱いとなっていたりする。一方で、 国家政策や学習指導要領解説などの公文書には、唱歌を自文化に類する文言で記すことが増えてきており、冒頭の問いに対する検証をすることが急務となっている。

     そこで本稿では唱歌の文化的位置付けを明らかにすべく、文化の定義をルーマンの自己準拠的な社会システム理論に求め、ここで示された文化の構成要素に基づき唱歌を検討した。その結果、唱歌は日本の社会から生み出されたものであること、社会的課題の解決のために国家政策として唱歌を用いていること、そして、国民に広く受容され当該社会の記憶が含まれているという 3 点がルーマンの定義に合致しており、唱歌は自文化であることを検証することができた。

     最後に、伝統や古典の定義に基づき検討を重ねた結果、唱歌は時間的に伝統文化といえる域に達しており、中には古典の範疇に入る可能性があるのではないかと思われる曲も存在することを示唆した。

  • 世界的な潮流と日本人ビートボクサー “Afra” との関わりから
    河本 洋一
    原稿種別: 評論論文
    2019 年 17 巻 p. 33-52
    発行日: 2019/11/30
    公開日: 2020/11/30
    ジャーナル フリー

     人間の音声を駆使した “ヒューマンビートボックス” という新たな音楽表現は日進月歩の発展をみせており、海外では愛好者のコミュニティや研究者らの間で、活発な議論が展開されている。一方、日本では技術面への関心は高いものの、 概念形成に関する議論は不足しており、その拠り所となる日本語の資料が必要であった。

     そこで本稿は、世界最大の愛好者コミュニティの様々な論考や世界初の解説書などが示す内容に、国内外の “ビートボクサー” と呼ばれる演奏者らへの聞き取り調査の結果を加え、ヒューマンビートボックスの歴史的背景や音楽表現としての様々な特徴や可能性を整理した。その結果、日本におけるヒューマンビートボックスの捉え方と世界的な流れにはずれがあったことや、ビートボクサーAfra(本名:藤岡章)が世界と日本との架け橋となり、日本におけるこの音楽表現の発展に大きく貢献したことなどが明らかとなった。

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