音楽表現学
Online ISSN : 2435-1067
Print ISSN : 1348-9038
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研究報告
  • 東京音楽学校内演奏会と日本フーゴー・ヴォルフ協会発足時の『会報』第 1 号を中心として
    赤塚 太郎
    原稿種別: 研究報告
    2020 年 18 巻 p. 1-10
    発行日: 2020/11/30
    公開日: 2021/11/30
    ジャーナル フリー

    ドイツ・リートを芸術の高みへと導いた一人、フーゴー・ヴォルフ Hugo Wolf(1860-1903)のこれまでの研究は、評伝や特定の 作品に関する楽曲分析、作曲上の特徴的書法が中心で、日本におけるヴォルフの受容や普及については、学術的な説明がなされてこなかった。

    本論は、東京音楽学校におけるヴォルフの歌曲の演奏歴やその当時の受容状態、さらに 1963(昭和 38)年に発足した日本フーゴー・ヴォルフ協会の第 1 回例会(演奏会)での取り組みについて検証し、日本でヴォルフの作品がどのように受容されてきたのかを考察したものである。

    ヴォルフの歌曲が東京音楽学校の演奏会で初めて演奏されたのは、1913(大正 2)年のことだが、それから約半世紀の間は、同一曲 が複数回演奏された程度に留まり、畑中良輔や川村英司らの証言から、その当時、ヴォルフの普及にはほど遠い状況だったことが判った。その後、国際フーゴー・ヴォルフ協会やオーストリア国立図書館等の内外の多くの支援により、日本フーゴー・ヴォルフ協会が発足し、第 1 回例会ではかつてないほどの意欲的なプログラムが組まれたことにより、様々な作品が紹介され、日本フーゴー・ヴォルフ協会の誕生によって本格的なヴォルフの普及が始まった。

  • アムステルダム版(1710 年)における伝統と革新
    堀内 由紀
    原稿種別: 研究報告
    2020 年 18 巻 p. 11-20
    発行日: 2020/11/30
    公開日: 2021/11/30
    ジャーナル フリー

    楽譜に書かれていない、いわゆる「恣意的装飾」を演奏者が加えるという習慣がバロック時代にあった。18 世紀のヴァイオリン音楽の場合、特にソナタなどの緩徐楽章には、和声や対位法に基づく色彩豊かな装飾が行われていたであろう。しかし現代のヴァイオリン奏者にとって、この「恣意的装飾」をどこに、どれほど、そしてどのように加えたら良いかということは「趣味」に拠る所が多く、楽譜に書かれていないものを加えて表現するということが如何に難儀であるかは明らかである。それでも、かつての習慣の実態を知り、それを自らの演奏に活かす方法はないのだろうか。そこで本稿では演奏者の立場から、コレッリ=アムステルダム版(1710 年)を取り上げ、「恣意的装飾」の特徴や傾向の把握を試みた。その結果、ディミニューションの伝統を用いながらも革新的な要素が用いられ始めている様子が示唆された。

  • 学習者の独自性を発揮する枠組みとして
    小島 千か
    原稿種別: 研究報告
    2020 年 18 巻 p. 21-32
    発行日: 2020/11/30
    公開日: 2021/11/30
    ジャーナル フリー

    「音楽づくり」の学習活動は、近年では学習者が音楽の構成要素、表現媒体、形成原理などの視点から音楽を理解することを目指して、用いる要素や構造があらかじめ決められた枠組みの中での活動へとシフトしている。しかし、学習者がある程度の枠組みの中で自ら音楽の構成要素、表現媒体、形成原理について思考・判断し、独自に音楽を形づくることも必要であると考える。今回はその枠組みとして「色を基にした音づくり」と「音楽の形成原理に基づく絵画から発展する音楽づくり」を提案し、この枠組みの有効性の検証を目的とした実験授業を実施した。

    実験授業は、大学生を対象に打楽器を用いてグループによる 3 段階で計画された。第 1 段階では、色を基にした音づくりにより、構成要素と表現媒体に対する思考・判断を促すことができることが明らかとなった。第2段階では、時間構成のガイドとなる絵画を用いて活動を行った。なお、音楽全体の構成に集中できるよう,絵画で用いられた色に限定して音づくりをした。その結果、音楽の形成原理や構成についての思考・判断が促され、音楽づくりができることが明らかとなった。第3段階では、第2段階でつくった音の色と同じ色で構成される絵画を基に音楽づくりを試みた。しかし、独自に形成原理を思考・判断し音楽を形づくることができなかったグループが存在した。

    以上の実験授業から、これらの活動の効果は明らかとなったが、全員が達成できるためには、音づくりにおいても音楽づくりにおいても何らかの条件づけが必要であることが明らかとなった。なお、音楽づくりの副産物として、拍節的な部分と拍節のない部分の混在、間まや異なるテーマの重なりなど多様な表現がみられた。これは今回の枠組みを用いたからこそ学習者の独自性が発揮され生み出されたと考えられる。

  • 発話と描画を手がかりとした1年にわたる観察記録
    吉田 直子
    原稿種別: 研究報告
    2020 年 18 巻 p. 33-40
    発行日: 2020/11/30
    公開日: 2021/11/30
    ジャーナル フリー

    本稿では、4 歳児が表現との相互作用を通じて音楽認知を変化させた過程を明らかにする。1 年間のピアノレッスンの観察記録と母親へのインタヴューから、認知にかかわる言動が見られる場面に注目して考察した。その結果、子どもはレッスンで学んだリズムや知識を用いて、言葉や絵画で積極的に表現し、相互作用させて自らの音楽認知を変化させていた。ピアノレッスンは個人レッスンという形態から、子どもが認知した内容を身近な日常生活に反映して表現と相互作用させながら、さらに自分の認知を変化させていく過程を捉えることが可能であった。

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