2022 年 1 巻 1 号 p. 105-117
本稿では,筆者の考える経営史的な視座と方法を説明し,それによって比較的研究蓄積の乏しかった日用品のメーカーの中間流通戦略や中間流通企業に焦点を当てて検討してきた研究の蓄積を基礎に,林周二の『流通革命』とアメリカ経営史のチャンドラーによるメーカーと中間流通企業の歴史的関係に関する所説の再検討を試み,「問屋有用論」を唱える卸業界EDI企業の経営者の所説も紹介した。また,日本の近代以降の長期の歴史のなかでの卸売企業の位置づけの変遷を概観し,川上と川下の双方からの圧力が強まるなかで卸売企業の成否を分けた諸要因についても検討した。成否を分けた大きな要因の1つは,『流通革命』を警鐘と受け止めた次世代の若手経営者の情報交換や,彼らによる垂直的・水平的競争を勝ち抜くための機能向上と経営近代化の戦略と投資であり,それらを実現する人材の確保であった。