日本企業における消費者対応部門は1970年代から整備が進んだが,当初の消費者対応は,苦情処理という位置づけにとどまり,社内での地位も低かった。そうしたなかで1980年に発足したACAPは,企業や業種の枠を越えて消費者対応のノウハウを蓄積・共有するとともに,消費者対応という業務をマーケティングの一環として位置づけることに努め,「消費者志向体制」の整備に大きく貢献した。先進的な企業においては,コンピュータを利用したシステム整備が進み,消費者対応を通じて集めた消費者の声を,社内のさまざまな部門にフィードバックする態勢も整えられ,商品の改善や開発につながる成果も表れた。1980年代後半以降には,消費者対応部門の名称に「お客様」の呼称を冠する企業が増えていったが,そうした変化は,消費者対応の業務がマーケティング上の位置づけを獲得していったことと,深く結びついていたと考えられる。