流通業(小売・外食・サービス業)の海外進出は,製造業の海外進出に比して,進出件数が限られるうえに統計的なデータや開示情報が乏しいことが指摘でき,それらが研究の阻害要因となってきた。その解決策として従来から採られてきた手法が,個別企業に対するヒヤリング調査であった。ヒヤリング調査は多くの情報をもたらす有益な手法ではあるが,一方で限界も多い。また,その調査手法の実態については,ほとんど明らかになってこなかった。そこで本稿は,流通業の海外進出に関する情報が不足する要因を明らかにすると共に,以前から多用されてきたヒヤリング調査という手法が有する有効性と限界について,筆者自身の経験を基にして明らかにしている。