抄録
ウサギの射出精子を用いた体外受精法はいくつかの実験が試みられているが、今だに十分な受精率が得られる安定した方法は確立されているとは言い難い。我々はウサギ射出精子による安定した受精が得られる方法について検討した。得られた結果は以下のとうりであった。射出精子を洗浄した後にアルブミンを添加した修正タイロード液中で4-5時間のincubationを行ってcapacitationを誘起した。この精子を用いて排卵卵子を体外受精(IVF)を行うと平均して92%以上の受精が得られた。また、その受精卵子の78.3%以上がinvitroの条件下で発生した。これらの結果はすでに類似の条件下で行った我々の教室からの報告と類似した結果であった。また短時間でcapacitationを誘起する目的で上述の培養液中で射出精子を1時間incubationを行い、その後50μg/mlのlyscphosphatidyl choline〈LPC〉を添加した培養液中で15分間感作させた。感作後、新鮮な培養液に精子を移して30分間incubationを行ってIVFに用いた。その結果、非常に高い安定した受精率が得られた。これらの方法によって得られた受精卵子の体内での発生能について調べるために偽妊娠を誘起した雌ウサギの卵管あるいは子宮内に受精卵子を移植した結果、何れの方法で得られた受精卵子も正常な発生を示して新生仔が得られた。以上の結果から、本実験で使用したIVFにより安定してウサギの受精卵子得られること考えられた。