Skin Cancer
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特別講演
メラノーマ形質を分子標的とした化学・温熱・免疫療法の基礎と臨床
神保 孝一高田 知明佐藤 牧人佐藤 亜紀子神谷 崇文小野 一郎山下 利春田村 保明佐藤 昇志宮本 篤若松 一雅伊藤 祥輔井藤 彰本多 裕之村瀬 勝俊
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2009 年 24 巻 2 号 p. 174-180

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抄録
ガンの新規治療法の開発の最も有効な方法の一つはガン細胞固有の分化形質を分子標的とすることである。皮膚ガンの中で最も悪性で,転移性病変に対し外科的切除以外有効な治療法がないメラノーマに対し,メラニン形成を分子標的とした新規温熱療法である「化学・温熱・免疫療法;chemo-thermo-immunotherapoy(CTI療法)」の確立のための基礎と臨床について述べた。メラニン形成酵素,チロシナーゼの特異的基質であるチロシン(フェノール)のアミン誘導体(N-propionyl,N-acetyl cysteaminylphenol;NPrCAP,NAcCAP)を合成した。NPrCAP,NAcCAPはメラノーマ細胞に選択的に取り込まれ,チロシナーゼと反応し細胞障害性ラジカル(酸化ストレス)を産生し,メラノーマの増殖抑制を示した。この選択的薬剤デリバリィ(drug delivery system;DDS)を利用し,また選択的化学療法効果を増加させるために微細鉄粒子(magnetite nanoparticles)表面にNPrCAPを重合させた薬剤(NPrCAP/M)を合成した。NPrCAP/Mは選択的にメラニン形成経路に取り込まれメラノソーム内に集積した。その後交換磁場照射により温熱を発生させ選択的温熱細胞殺効果を起こさせ,結果として生じる熱ショック蛋白(HSP)とメラノーマペプチド結合体を介した温熱免疫療法により,遠隔転移メラノーマの消滅を図った。
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© 2009 日本皮膚悪性腫瘍学会
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