経営哲学
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経営者哲学に関する研究― 思想の解明 ―
岸 泰正
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2023 年 20 巻 1 号 p. 16-32

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抄録

これまで日本の経営者は自らの「経営哲学」を以って、社員に対し「かくあるべし」とその行動のあり方を指示してきた結果、日本の企業は諸外国の企業を追い越し、物質的な豊かさを実現したが、物質的に満たされた現代においては「かくあるべし」では人は動かなくなり、やらされ感を助長し、自発性と成長を阻害し、行き詰っている。

そこで、本研究では、これまでの日本の経営者の「かくあるべし」という考え方と行動に道を示し、重大な影響を及ぼしてきたと考えられる経営者の抱く形而上学的論理(経営者哲学)について、批判的な議論を行い、時代変化を踏まえた課題を明らかにし、それを解消する今後の経営者哲学を推測した。

永野(2015)は、経営哲学の経験科学的側面だけでなく形而上学的側面に対して批判的な議論を行うことが不可欠であり、Popperの批判的合理主義に基づき、他者との批判的な議論を可能とする定式化の中での厳しい議論が不可欠であると主張した。

これに対応し、本研究では、定式化の手法としてPopperの提唱する理論的枠組みの中でSCAT分析の概念化のプロセスを活用した。

これにより、日本の経営者哲学に「強制」あるいは「存在・価値の否定」が内包されていることを明らかにするとともに、批判的合理主義に基づく考察により、現代における課題解決への論理の有効性と論理の内部整合性とに疑問があることを示した。

また、平出(2005)は、経営・経済哲学(倫理学)において、「存在=被制作性」という存在概念が近代形而上学的思考の超克を不可能としており、この超克のために、「存在=被制作性」という存在観に基づく諸活動に抗して、「存在=生成」という存在観に基づく活動の領域を確保することを主張した。

本研究では、この視点から今後の日本の経営者哲学について考察し、「宇宙は生成・発展する意志と力を持っており、人間に注ぎ込み、人間は『無条件に』生成・発展するものである」となると推測した。

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