2024 年 20 巻 2 号 p. 2-13
本稿ではまず現代における多様な視点や多元的な価値への注目が、「合理性」「人間性」等の価値観を基底にする近代化の揺れを出自としていることを、Weber、フランクフルト学派、ポストモダニズムに遡って示している。そうした近代化の動揺にマネジメント・組織研究(MOS)が影響を受けて、Burrell and Morgan (1979) 以降、組織研究においてモダニズム=ポストモダニズムの図式が鮮明になったことを確認する一方、それに内在する客観=主観次元の二項対立に依然課題があることを指摘している。それを踏まえた上でこうした二項対立の課題をHabermasのコミュニケーション的合理性から克服しようとする試みに言及するとともに、再帰的近代化論に基づいて二項対立にとらわれない近代社会の視座も提供している。そしてそうした視座から読み解く思想的潮流としてのポストヒューマニズムに着目し、そこにおける新たな哲学的アプローチの1つであるDeLanda集合体論に依りながらMOSの発展可能性についてアクターネットワーク理論を中心に検討している。