抄録
ニホンナシ栽培品種の起原とその変遷を明らかにして,新品種育成の基礎資料とするため,東洋産ナシ属の野生種および栽培品種,合わせて計79品種の果実に含まれる糖類(フルクトース,グルコース,ソルビトール,シュークローズ)について,その種間差,島種間差を調べた。日本在来島種を1:江戸時代中~後期に栽培記録のある品種,2:江戸時代末期から明治時代にかけて発見された品種,3:交配育成品種の3群に分けて,全糖含量を比較した結果,後期の群ほど含量が高かった。また,糖組成,特にシュークローズ率は明治に入り高くだり,最近の育成品種はやや低下した。4種の糖類の全糖含量に占める割合(%)を基に,主成分分析を行った結果,同種,同産地の品種は類似した糖組成を示し,スコアの散布図,産地等より以下の6品種群に区分した。1:二十世紀群(シュークローズ型),2:南関東群(千葉,神奈川在来品種と育成品種),3:チューゴクナシ群(ソルビトール型),4:イワナヤマナシ群(イワナヤマナシ改良品種と裏目本在来品種),5:群馬群(群馬,埼玉在来品種,フルクトース型),6:高知群。ここで,2,4,6群の糖組成は,それぞれ,1と3,3と5,5と1の中間型を示した。