経営哲学
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Print ISSN : 1884-3476
研究ノート
経営哲学に「生命尊厳を最高の価値基準」とすることを実装するためのアプローチ
相川 清
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2025 年 21 巻 2 号 p. 56-66

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抄録

本稿では、高田馨(1967)が区分した「経営者がもたざるをえない経営哲学」の中に島袋嘉昌が提唱した「生命尊厳を最高の価値基準」とすることを実装するためのアプローチを試みる。まず財務省の法人企業統計調査データより企業の従業員給与の推移を中心とした付加価値分配行動を考察する1)。同調査(資本金10億円以上、1987-2023)より、1997年を100とした場合の企業業績と役員給与、従業員給与、設備投資、配当金の割合の推移(図1)、付加価値分配額の推移(図2)の長期時系列データから経常利益は大幅に向上しているにもかかわらず、従業員給与や設備投資額は横ばいもしくは減少、株主配当金は大幅に増加していることを示し、偏った付加価値分配の問題を指摘する。そして付加価値と従業員給与の推移(図3)を示し、付加価値は向上しているものの従業員給与は横ばいであり、賃金上昇のためには付加価値や生産性を向上させるべきであるという先行研究を批判的に考察する。賃金停滞の要因として、大企業のコスト削減と効率化、短期的利益の追求によってもたらされた職場の分断が一因であり、その結果株主配当金増加に繋がっているとするDavid Weil『The Fissured Workplace(分断化された職場)』(2014)を考察し、経営者は従業員に対して「人間の尊厳の承認」、「生命尊厳を最高の価値基準」とする経営哲学が重要であることを示す。高田(1967)は経営哲学の区分において、未然当為としての経営理念を「経営者がもつべき経営理念」、未然必然としての経営理念を「経営者がもたざるをえない経営理念」とした。本稿では経営理念という言葉を経営哲学に置きかえ、「経営者がもたざるをえない経営哲学」として経営哲学を明確に区分することの必要性、そしてその内部に「生命尊厳を最高の価値基準」とすることを組み込むことを提言する2)

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