2020 年 20 巻 1 号 p. 9-14
筆者は,理学療法士として,オーストラリアのプライベートクリニックで,スポーツ,筋骨格系の患者を中心に診療している。日本在住時に,国際学会で発表する機会を何度かいただき,先進国のセラピストとの権利や役割の違いに驚き,オーストラリア留学を決めた後,現在はこちらで診療している。オーストラリアでは,ダイレクトアクセスが認められており,医療従事者として総合的に判断し,理学療法の適応か,画像の処方,医師への紹介が必要かを考慮しながら診療することが必要である。良くも悪くも権限の範囲が広いため,自分の身を守るためにも,エビデンスに基づいた診断,治療が必要である。徒手検査でも,sensitivity やspecificity を考慮しながら診断を下し,治療においても効果量(effect size)から優先順位をつけて行うことが重要になる。卒後教育は,オーストラリア理学療法士協会から,年間最低20 時間の講習が義務づけられ,また,専門領域のコースがあり,titling とspecialisation という公式の専門領域セラピストプログラムに進んでいく。