MACRO REVIEW
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総説
「インフレーション(インフレ)」について:カレツキの二分法
松谷 泰樹
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2024 年 36 巻 2 号 p. 33-63

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抄録

 カレツキの「インフレーション理論」は,Kalecki (1938) とKalecki (1954) から導出され,「二分法」としての性格をもつ。Kalecki (1938) は,「カレツキ体系」を形成するうえでの「ミッシングリンク」と見なされるものであり,それを進化させたものが Kalecki (1954) の第1章である。カレツキ体系では,「物価」とは「諸価格の平均」であるとされており,「ある一定期間における物価の上昇」が「インフレーション」として定義される。Kalecki (1938) の「二分法」を否定するKalecki (1954) の「二分法」では,不完全競争から寡占へと理論の発展を遂げている。物価水準は「価格方程式」の加重平均により示されて,インフレーションの発生が捉えられる。「物価騰貴」が起きるのは,一般的に原料や設備の不足が,需要に比して供給を厳しく制限していることによる。この理論により見出されるインフレの問題とは,利潤と賃金の間の所得分配の比率の変化であり,「所得再分配効果」である。つまり,賃金の購買力が低下し,有効需要の不足が起こり,産出量や雇用が減少し,「スタグフレーション」が発生しかねないないというものである。この理論による洞察は,物価水準の上昇のもとで,貨幣賃金が上昇しても,実質賃金は低下しないということであり,また,趨勢的に上昇する傾向にある独占度のもとでの,労働の資本にたいする抵抗の決定的な重要性である。これらに,政策的含意が見出される。

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