2022 年 100 巻 1 号 p. 29-44
熱帯成層圏における準二年振動(QBO)の十年規模変動を1950年代から2019/2020年までのシンガポールと再解析のデータを使って調べた。その結果、QBOは周期と同様に振幅も十年規模の時間スケールで変調されていることが判明した。これら2つの十年規模変動は1980年代以前には正相関であったが、1980年代以降は負相関を示していた。1950年代から2014年までの期間において、QBO振幅には4つの極大値(QBOmax)が1967、1983、1995、2005年ころにあり、3つの極小値(QBOmin)が1973、1988、2000年ころにあった。これらのQBOmaxとQBOminのコンポジット解析を行ったところ、QBO十年規模振幅変動は鉛直断面で最大値は20hPa面において約3m s-1であった。一方、水平構造において最大値は赤道上に位置せず、その値は20hPa面では北緯5度で3.5m s-1、50 hPa面では南緯5度で1.8m s-1であった。QBO十年規模振幅変動はNiño 3.4域の海面水温偏差や太平洋十年規模振動(PDO)指数の十年規模成分と正の高い相関になっており、太平洋中央の熱帯海面水温偏差が十年規模のタイムスケールでQBOに実質的な影響を及ぼしていることを示している。