2022 年 100 巻 1 号 p. 77-97
乾季(6月~11月)におけるインドネシアの降水量の年々変動および数十年スケール変動について、1939年から2016年までのClimate Research Unit(CRU)および1979年から2016年までのGlobal Precipitation Climatology Project(GPCP)の降水データを用いて解析した。 CRUデータとGPCPデータの両方のEOF第一主成分(PC1)は、標準的なEl Niño-Southern Oscillation(ENSO)、ENSO Modoki、およびIndian Ocean Dipole(IOD)が、インドネシアの降水量の年々変動に影響を与える主要な気候モードであることを示した。また、Interdecadal Pacific Oscillation(IPO)が降水量の十年スケール変動に影響を及ぼす主要な要因であることも示された。さらに、IPOは、インドネシアの降水に対するIODの影響を変化させ、1979年から1997年の正のIPOフェーズではIODの影響が弱く、1939年から1978年と1998年から2016年の負のIPOフェーズではIODの影響が強くなることが明らかになった。また、標準的なENSOおよびENSO Modokiの影響のIPOフェーズ依存性は全般的には不明瞭ではあるものの、1998~2016年の負のIPOフェーズでは、それ以前の期間と比較して、ENSO Modokiの影響がより重要になる一方で、標準的なENSOの影響はそれほど明確ではなくなっていた。