2022 年 100 巻 3 号 p. 493-507
本研究では、1980年から2019年までの潮汐記録と上陸した熱帯低気圧(TC)のベストトラックを調査し、東京を含む日本中央部の沿岸地域における高潮偏差の変化を明らかにした。その結果、年平均の高潮偏差は1980-1999年に比べて最近20年間(2000-2019年)で上昇しており、特に東京湾ではその変化が顕著であることがわかった。また、1980年から2019年にかけて、高潮偏差の増加に対応して、上陸時間帯のTCの風の強さと大きさがそれぞれ強く、大きくなっている。また、より北東方向に進路をとるTCの出現頻度が高くなっていることも東京周辺の高潮ハザードを増加させている要因の一つと考える。さらに、高潮偏差とハザード指数の間に正の相関関係があることも、これらの統計結果を裏付けている。日本中央部の沿岸地域では、現在の増加傾向が続くならば、将来的に極端な高潮現象の発生数が増加する可能性が高い。