気象集誌. 第2輯
Online ISSN : 2186-9057
Print ISSN : 0026-1165
ISSN-L : 0026-1165
Article
CMIP6マルチモデル将来予測における夏季東アジアの確かな海面気圧パターンと不確かなパターン
尾瀬 智昭遠藤 洋和高谷 祐平前田 修平仲江川 敏之
著者情報
ジャーナル オープンアクセス HTML

2022 年 100 巻 4 号 p. 631-645

詳細
抄録

 地球温暖化将来予測において、確かな夏季東アジア海面気圧配置と不確かな気圧配置およびこれらの要因について、第6次結合モデル相互比較プロジェクト(CMIP6)の多数モデル実験に対するモデル間経験直交関数(EOF)解析をもとに、CMIP5の解析結果との共通点に注目して研究した。

 CMIP6気圧将来変化のアンサンブル平均およびEOF第1モードから第3モードは、CMIP5の場合とそれぞれ類似している。第1モードと第2モードは、東アジア亜熱帯の高気圧の強化と東アジア北方での高気圧の弱化を表現している。第3モードは夏季東アジア気圧配置と逆の偏差パターンであり、南風モンスーンの弱化を意味する。

 第2モードはほぼすべてのCMIP6将来気圧変化に正符号で寄与していて、確実な将来変化パターンを表す。この確実なモードは、全球平均に比べると北半球大陸およびその周辺海域の地表付近の、より強い昇温の結果である。第1モードと第3モードは、アンサンブル実験の将来変化に寄与する符号がモデルで異なるため、主要ではあるが不確実な予測パターンであると考えられる。第1(第3)モードは、地球温暖化で鉛直方向に安定化した大気がもたらす、インド洋の赤道域(北方域)での鉛直流抑制および太平洋の赤道域(北方域)での逆方向の鉛直流偏差が要因として考えられる。上記のモードの特徴は、CMIP5の解析結果と本質的に共通している一方で、異なっている海面水温偏差はモードの2次的な構造と関係している。

 不確実な将来変化のある部分は、現在気候における降水量再現性の系統的なモデル差異に原因を求めることもできる。というのも、これが地球温暖化時に抑制される鉛直流分布を決めているからである。

著者関連情報

© The Author(s) 2022. This is an open access article published by the Meteorological Society of Japan under a Creative Commons Attribution 4.0 International (CC BY 4.0) license.
https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/
前の記事 次の記事
feedback
Top