気象集誌. 第2輯
Online ISSN : 2186-9057
Print ISSN : 0026-1165
ISSN-L : 0026-1165
Article: Special Edition on Typhoons in 2018-2019
台風経路アンサンブルシミュレーションを用いた台風Jebi(2018)による日本の沿岸域における最大潮位偏差の調査
大滝 寿一筆保 弘徳高野 洋雄竹見 哲也森 信人飯田 康生
著者情報
ジャーナル オープンアクセス HTML

2022 年 100 巻 4 号 p. 661-676

詳細
抄録

 本研究は、2018年に大阪湾において高潮による甚大な被害をもたらした台風21号(Jebi)を対象に、気象モデルとパラメトリックな2次元台風モデルによる台風経路アンサンブルシミュレーションを行い、日本の沿岸域の最大潮位偏差を調べた。大阪港での潮位偏差は、パラメトリックな2次元台風モデルよりも気象モデルの方が観測結果と近い値となった。この両モデルの違いは、大阪湾の海上で強まる吹き寄せ効果に依存するものであった。台風経路アンサンブルシミュレーションの結果より、本州、四国、九州における沿岸域では、経度方向の経路の移動に依存していることがわかり、太平洋にひらいた浅い湾では、最大潮位偏差が2.50mを超える地点もあった。沿岸域の中で最も潮位偏差を大きく予想した地点での最悪のコースは、台風中心が対象地点を通過するヒットコースよりも西側または東側0.4-0.8ºを通過するため、吹き寄せ効果が重要な要因であることを示している。この最悪のコースからヒットコースまでの距離は、Jebiの最大風速半径とほぼ同じ距離であった。どちらのモデルも最悪のコースは、対象となる沿岸域に対してほぼ同じ経路を通過した。最大潮位偏差は、気象モデルの方が傾度風モデルよりも高く予想される傾向となった。本州、四国、九州の沿地点で、最大潮位偏差が2.00mを超えた地点は約6.0%であった。これらの値は、台風の特性や、抽出地点に依存している。しかし防災や災害リスク管理の観点から、台風による高潮被害が発生していない地点を含むすべての沿岸域で、最大潮位偏差と最悪コースを推定することは重要である。

著者関連情報

© The Author(s) 2022. This is an open access article published by the Meteorological Society of Japan under a Creative Commons Attribution 4.0 International (CC BY 4.0) license.
https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/
前の記事 次の記事
feedback
Top