気象集誌. 第2輯
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Notes and Correspondence
熱ストレス緩和のためのツールとしての日傘、ドライミスト散布、街路樹
日下 博幸中村 祐輔浅野 裕樹
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2022 年 100 巻 4 号 p. 677-685

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抄録

 日傘は、携帯可能で安価であることから、屋外での合理的な熱ストレス対策といえる。本研究では、日本の夏の高温多湿の日において、日傘の熱ストレス緩和効果を街路樹やドライミスト散布の効果と比較した。日傘、街路樹、ドライミスト散布の下と日向で気象要素を観測し、Universal Thermal Climate Index (UTCI)とWet-Bulb Globe Temperature (WBGT, 湿球黒球温度)を算出した。その結果、日傘下でのUTCIとWBGTは、日向よりもそれぞれ4.4℃と1.3℃低くなった。これは、下向き短波放射の減少により黒球温度が低下したためである。このことから、日傘は熱中症リスクを1段階下げられることが実証された。また、UTCIの観点からは、日傘の効果は街路樹の効果の75%以上であることも分かった。街路樹は日向よりもUTCIを5.9℃、WBGTを1.9℃低下させ、熱中症リスクを1段階低下させることができた。一方、ドライミスト散布は、風が吹く条件下では熱ストレスを緩和しなかった。本研究の結果は1日の観測によるものだが、先行研究との比較から、本研究の観測結果は日本の夏の日を代表するものである。

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© The Author(s) 2022. This is an open access article published by the Meteorological Society of Japan under a Creative Commons Attribution 4.0 International (CC BY 4.0) license.
https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/
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