2022 年 100 巻 5 号 p. 751-766
日本の鈴鹿山脈風下で発生する強い局地風「鈴鹿おろし」の特徴と形成メカニズムについて調べた。この地域はおろし風の発生しやすい地形である。鈴鹿おろしは、主に寒冷前線を伴った温帯低気圧が日本海を通過した後(全事例の55%)に発生することが明らかになった。また、逆転層(高度1〜5km)が74%の事例で観測された。空間的に密な観測データを用いた気候学的解析により、強風は鈴鹿山脈の風下側北部においても吹く傾向があることが示された。また、ある1事例を対象としたWeather Research and Forecasting (WRF) モデルを用いた水平解像度1kmの数値シミュレーションでも、この知見を裏付ける結果が得られた。鈴鹿山脈の風下側北部の強い鈴鹿おろしは、流れのレジームの変化(内部フルード数が山脈の風上で1.0以下、風下で1.0以上)を伴うおろし風であることが示された。また、南北の山地の高さの違いにより、北部の風速が南部に比べて強くなることが示された。