2022 年 100 巻 6 号 p. 873-891
冬季モンスーン発生時には、日本海北部で形成された降雪バンドが北海道へ到達し、北海道岩見沢市を含む北海道西部の沿岸域では大雪になる。比較的暖かい日本海は、気団変質を通じて大気へ水蒸気や熱を供給し、日本海側の地域の降雪量を増加させる。しかしながら、日本海北部の水温変化が北海道西部沿岸域の降雪量に与える影響は明らかになっていない。そこで本研究では、再解析データを用いて、冬の各月に岩見沢で大雪が発生する年の大気・海洋循環場をそれぞれ調べた。どの冬の月も岩見沢で大雪が発生する際には、地表面大気がユーラシア大陸で高圧偏差・北太平洋で低圧偏差を伴う循環場となり、極東で寒気移流が卓越することで北日本では低温偏差となっていた。海洋場では、1月に大雪が発生する際に1~2ヶ月前から日本海北部に高水温偏差があり、大雪発生月に海洋から大気への乱流熱フラックスを増加させていた。この日本海北部の高水温偏差は、北側への対馬暖流の流量の増加により起因しており、対馬暖流の強化が岩見沢での大雪発生要因の一つであることを示唆している。