気象集誌. 第2輯
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Notes and Correspondence
シルクロードパターン事例の何割がロスビー波の砕波を通して太平洋・日本パターンを引き起こすのか?
竹村 和人向川 均
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2023 年 101 巻 1 号 p. 5-19

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抄録

 本研究では、夏季アジアジェット出口付近でロスビー波の砕波を伴うシルクロードパターンが、太平洋・日本(PJ)パターンを引き起こす割合を調査した。ここで、シルクロードパターン事例は、ユーラシア大陸上での対流圏上層の南北風の主成分分析に基づき、黄海及び日本付近が高気圧性偏差となるパターンで特徴づけられる第1、2主成分を用いて抽出した。さらに、抽出した事例を、砕波を伴う事例と伴わない事例に分類した。

 砕波を伴うシルクロードパターン事例では、アジアジェット出口付近の上層での高気圧性偏差は、砕波を伴わない事例と比べて東西により広がった形状を持ち、振幅も大きい。この事例の合成図では、シルクロードパターンに伴う波列パターンがユーラシア大陸上に存在し、アジアジェット出口付近で砕波を伴っていた。砕波の発生は、砕波域でのアジアジェットの強い減速及び分流と関連する。また砕波は、上層の高渦位気塊の進入を通して、砕波域の南側で活発な対流活動を促し、PJパターンを形成する。合成図において出現する明瞭なPJパターンは、南側で低気圧性偏差、北側で高気圧性偏差を持つ双極子構造を示す。そして、砕波を伴うシルクロードパターン事例の約60~70%が、PJパターンを伴っていた。

 一方、砕波を伴わないシルクロードパターン事例の合成図では、ユーラシア大陸上で波列パターンは存在するが、砕波域の南側で活発化した対流活動及びPJパターンは存在しない。そして、砕波を伴わないシルクロードパターン事例の約40~50%がPJパターンを伴っていた。したがって、砕波によって正のPJパターンの出現頻度は1.2~1.7倍に増加し、砕波はPJパターンの励起に重要な役割を果たしていることが明らかになった。

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© The Author(s) 2023. This is an open access article published by the Meteorological Society of Japan under a Creative Commons Attribution 4.0 International (CC BY 4.0) license.
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