気象集誌. 第2輯
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北半球夏季季節内振動と太平洋-日本パターンに関連した熱帯西部北太平洋における総観規模擾乱の発達
清木 亜矢子小坂 優横井 覚
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2023 年 101 巻 2 号 p. 103-123

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抄録

 熱帯西部北太平洋において、北半球夏季季節内振動(BSISO)に伴う総観規模擾乱の発達メカニズムを、経年規模での太平洋-日本(PJ)パターンの異なる位相の下で調査する。BSISOの位相5-7における西部北太平洋上での季節内対流は、季節平均での対流活動が同領域で強化される正のPJ年において広く強化される。その一方で、負のPJ年では発達した対流は東シナ海上に限られる。このような特徴は、総観規模擾乱の活動度を表す擾乱の運動エネルギー(K’)や熱帯低気圧発生の水平分布にもみられる。このように、正と負のPJ年では、季節内対流や総観規模擾乱の発達する地域が異なるため、中緯度東アジア域への異なるテレコネクションへつながる可能性が高い。それ以外の非PJ年では、正PJ年と負PJ年の特徴が混在している。K’収支の結果、BSISOの対流活発期では、総観規模対流の発達と関連した擾乱の位置エネルギーからのエネルギー変換(PeKe)が第一に寄与していることが明らかになった。平均場の運動エネルギーからの順圧エネルギー変換(KmKe)は、対流圏下層において2番目に大きな要因であり、特に総観規模擾乱の発達初期に寄与している。熱帯域においてPeKeとKmKeにより生成された大きなK’は、擾乱発達の後期から成熟期にかけて、平均流によって亜熱帯へ移流される。PeKeやKmKeと関連して発達する総観規模擾乱の発達地域の違いを決定する要因は2つある。1つは、BSISOの対流活発に先立ってみられる対流抑制期における季節内規模での海面水温の上昇である。もう1つは、西部北太平洋上でのモンスーン西風の経年変動と関連する季節平均水平風の収束やシアである。

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© The Author(s) 2023. This is an open access article published by the Meteorological Society of Japan under a Creative Commons Attribution 4.0 International (CC BY 4.0) license.
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