抄録
フランス高速原型炉フェニックスの 2 次主冷却系配管で発生した高サイクル熱疲労によるき裂破損の主要因子を明らかにするため、T字形合流管部を模擬した基礎水実験およびこの数値解析を行った。基礎水実験の結果からは、合流後のフローパターンは、衝突噴流、偏向噴流および成層分離流に分類され、偏向噴流条件では周期的な渦放出により形作られるアーチ渦列の発生が確認された。他方、アーチ渦列が発生する偏向噴流条件での数値解析結果から、枝管噴流背後に生じる低圧死水領域への主流流入により循環渦が形成された後、この循環渦の回転によって大規模渦塊が枝管噴流端から離脱し、アーチ渦形状を保って流下する様子が評価された。また、アーチ状渦列の脚部が主管底面に沿って流下することにより、主管床面は温度過渡に常時曝されることを確認した。以上より、フェニックス炉における熱疲労破損では、アーチ状渦列が大きな役割を果たしていた可能性が明らかとなった。