気象集誌. 第2輯
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盛夏期におけるアジアジェットに沿う準定常ロスビー波束伝播と 太平洋・日本パターンとの力学的関連性
竹村 和人 向川 均
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2020 年 98 巻 1 号 p. 169-187

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抄録

盛夏期におけるアジアジェットに沿う準定常ロスビー波束の伝播と、太平洋・日本(Pacific-Japan:PJ)パターンが、アジアジェット出口付近におけるロスビー波の砕波を通して結合する可能性、及びそのメカニズムについて、長期再解析データを用いて調べた。まず、日本の東海上において発生した計44のロスビー波の砕波事例に基づくラグ合成図解析を行った。その結果、アジアジェットに沿う波束伝播が、日本の東海上において高気圧偏差の増幅を引き起こし、逆“S”字型の砕波に伴って、高渦位大気が北西太平洋亜熱帯域に向かって南西方向に侵入することがわかった。次に、Q ベクトルを用いた診断や渦度収支解析より、対流圏上層における砕波に伴う強い正渦度移流が、北西太平洋亜熱帯域における力学的上昇流を励起することにより、積雲対流活動の活発化、及びそれに伴うPJパターンの発現に重要な役割を果たすことが明らかになった。また、より強い砕波が生じた事例ほど、それに先行するアジアジェットに沿う波束伝播や、砕波後に生じるPJパターンが、より強くなる傾向となることが示された。さらに、偏相関分析より、北西太平洋亜熱帯域における活発な積雲対流活動やPJパターンの強化には、その周辺における海面水温偏差と比べて、対流圏上層における砕波に伴う強い正渦度移流が、より大きく寄与することが定量的に示された。これらの結果は、アジアジェットに沿う波束伝播が、日本の東海上における砕波、及びそれに伴う北西太平洋亜熱帯域への高渦位大気の侵入を通して、PJパターンを励起し得ることを示している。

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© The Author(s) 2020. This is an open access article published by the Meteorological Society of Japan under a Creative Commons Attribution 4.0 International (CC BY 4.0) license.

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