2020 年 98 巻 1 号 p. 153-167
本研究で「95パーセンタイルを越える日最高気温が3日継続する猛暑イベント」と定義した熱波が、2018年には、中国、日本、韓国を含む東アジアで6~8月に多発し、各地で最高気温極値を更新した。なかでも7~8月にかけての熱波は、朝鮮半島地域では21.3日続き、地域平均での最高気温が36.9℃に達した。韓国ソウル東方のHongcheonでは、1907年の観測開始以来の韓国内の最高気温41℃を記録した。本研究では、2018年の猛暑をもたらした原因を調査し、韓国での史上2番目の猛暑年である1994年との異同を検討した。その結果によると、2018年7月にみられた北太平洋高気圧の強化と北西への張り出しが、朝鮮半島北部を中心に8月まで継続した。これらの高気圧偏差の特徴は、東シナ海での低気圧性偏差を伴って、モドン的な状態を呈した。1994年には、北太平洋高気圧が東アジア東部に張り出して、南北の二極構造を壊し、熱波は継続しなかった。2018年に8月まで継続した北太平洋高気圧は、下降流を伴い、降水を妨げ、極端な最高気温をもたらし、偏西風のジェット気流を弱めると共に、晴天による日射の増加をもたらした。朝鮮半島を含む地域に北太平洋高気圧の北西への偏位が継続したことによって、韓国の2018年の猛暑が起こったといえる。さらには、2018年7月の日射の継続は、寡降水とそれに伴う蒸発散量の増加をもたらし、地表面の乾燥を強めた。熱中症や過度の蒸発散による農業被害の軽減のためには、北太平洋高気圧の位置および継続期間の予測が必要であろう。