気象集誌. 第2輯
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Articles : Special Edition on Global Precipitation Measurement (GPM): 5th Anniversary
衛星搭載二周波降水レーダによる全球雨滴粒径分布の4年気候値とその季節変動
山地 萌果高橋 洋久保田 拓志沖 理子濱田 篤高薮 縁
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2020 年 98 巻 4 号 p. 755-773

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抄録
 全球規模での雨滴粒径分布と降水特性との関係について、全球降水観測計画GPM主衛星に搭載されている二周波降水レーダ(DPR)による観測情報を用いて調査した。卓越する降水システムの季節変化に焦点を当て、雨滴粒径分布の代表的なパラメータとして、GPM/DPRによる質量荷重平均雨滴粒径(Dm)プロダクトを統計的に解析した。通年平均のDmは一般に海上よりも陸上で大きく、降水強度(R)とは単純な一対一での対応関係ではないことがわかった。さらにDmは統計的に有意な季節変動がみられ、特に北西太平洋ではその変動が顕著であったが、R の季節変動は有意ではなかった。これは、Dmの顕著な季節変化はRの変動のみでは説明できないことを意味する。
 北西太平洋に焦点をあてて解析すると、Dmが卓越する降水システムと関連して季節変化していることが示された。夏季は中緯度の梅雨前線に伴う降水帯や亜熱帯の熱帯擾乱に代表されるような、層状性と対流性両方の降水から構成される背の高い組織化した降水システムが卓越していた。冬季になると、中緯度と亜熱帯とでDmの変化が異なっていた。中緯度では層状性降水の比率が高くて上層に固体降水を伴う、温帯低気圧性の降水システムが卓越して、Dmが夏季より大きくなっていた、一方で、亜熱帯では、亜熱帯高圧帯下の貿易風循環に伴う対流性の積雲によってもたらされる背の低い降水システムが卓越し、Dmは夏季より小さくなっていた。
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© The Author(s) 2020. This is an open access article published by the Meteorological Society of Japan under a Creative Commons Attribution 4.0 International (CC BY 4.0) license.
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