気象集誌. 第2輯
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98 巻 , 4 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
Articles : Special Edition on Extreme Rainfall Events in 2017 and 2018
  • 川野 哲也, 川村 隆一
    2020 年 98 巻 4 号 p. 673-690
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/25
    [早期公開] 公開日: 2020/05/12
    ジャーナル オープンアクセス HTML
     2017年7月5日に九州北部地方で準停滞性対流バンド(線状降水帯)が発生し、約10時間も持続した。この線状降水帯による記録的な豪雨によって多数の地滑り・洪水が引き起こされ、甚大な被害が発生した。本研究では、この線状降水帯の発生・維持過程を明らかにするために、Weather and Research and Forecasting(WRF)モデルを用いた数値シミュレーションを行った。コントロール実験は観測された線状降水帯と極端降水の特徴をよく再現した。準停滞性下層収束帯が線状降水帯の発生・維持に決定的な役割を果たしていた。流跡線解析と前線形成関数解析は、日本海上の高気圧のブロッキング効果によって生じた下層合流場によって、この収束帯が発生・強化・維持されていたことを示した。また、この収束帯の温度傾度は九州と対馬海峡の海陸間熱的コントラストによっても強化されていた。九州全域の地形を平坦化した実験と雨滴蒸発過程を除去した実験も観測された線状降水帯を再現した。このことは、九州地方の地形および雨滴蒸発による冷気プールは本豪雨事例の線状降水帯の発生・維持に果たす役割は副次的にすぎないことを示唆している。
Articles
  • 髙村 奈央, 和田 章義
    2020 年 98 巻 4 号 p. 691-706
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/18
    [早期公開] 公開日: 2020/05/26
    ジャーナル オープンアクセス HTML
     2016年8月は,北西太平洋で8個の台風が発生し、その中の4個の台風が北日本及び東日本に上陸した。 そのため、大雨や強風により日本で深刻な災害が生じた。また、8個のうち5個の台風が温帯低気圧化(ET)し、これは8月の平均2.1個より多かった。そこで、2016年8月の特異な日本上陸及び高頻度のETをもたらした台風経路の特徴を明らかにするため、k 平均法によるクラスター分析及び低気圧位相空間(CPS)解析を8月及び9月の台風について行った。また、台風周辺の総観場を明らかにするためコンポジット解析及び事例解析も実施した。さらに 2016年8月の特異な特徴について調べるため、2016年8月における解析結果を、2001年から2015年までの8月及び2016年9月の解析結果と比較した。クラスター分析から、2016年8月の台風経路は 2001年から2015年までの8月における経路より北向きの特徴をもつことが示された。CPS 解析結果から、2016年8月の ET は 2001 年から2015年8月のものと比べて、暖気核から寒気核構造へ短い期間で不明瞭な構造変化をとるという特徴をもつことがわかった。2016年8月の台風周辺の総観場は、対流圏上層のジェット気流の蛇行の強化、対流圏中層の強いトラフ、対流圏下層の台風付近での暖かい空気により特徴づけられる。2016年8月の北向きの経路をもつ台風の特異な日本上陸、高頻度のET及びETにおける不明瞭な構造変化は、これらの総観場の特徴により説明される。
  • Chung-Chieh WANG, Kuan-Yu LIN, Christopher A. DAVIS, Shin-Yi HUANG, St ...
    2020 年 98 巻 4 号 p. 707-733
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/18
    [早期公開] 公開日: 2020/04/20
    ジャーナル オープンアクセス HTML
     本研究では、台湾の極端な降水に対する台風Morakot(2009)の渦構造のインパクトを、区分渦位逆変換法を適用して調べた。8月7日0000UTC、すなわち上陸の15時間前から始めたコントロール実験はそのイベントを現実的に再現し、結果は観測により検証された。中心から750km以内の渦位摂動を変更することにより、Morakotの大きさ及び循環強度を小さくしたり弱めたりしたいくつもの異なる初期値による感度実験を行った。
     感度実験において、特に内部コア(250kmより内側)の初期渦位を十分弱めた実験において、台風は早くに上陸し、陸上に長くとどまり、台湾から過ぎ去るのが遅くなった。このトラックの変化は計算の初期における内部コアの立ち上がりと収縮に伴うものであり、大規模場の下層南西風下における内部コア内における対流と潜熱加熱によってもたらされた。その結果、すべての感度実験で、台湾ではコントロール実験と同程度かそれ以上(最大12%増)の降水量が全体的に見られた。つまりより弱いMorakotであることは、台湾により少ない総降水量となるのに必要ではなく、この事例では、強い南西風と多量の水蒸気供給が渦構造よりもより大きな要素であった。
     一方で、収縮と外側の弱い循環に伴い、実際には最も降水の多い地域と期間である中央山脈南部の8月8日の降水は、最大で40%も減少する傾向があった。このように感度実験の降水パターンとその時間発展はコントロール実験と顕著に異なり、渦構造はこの領域の降水において重要な役割を果たしていることが示された。 
  • Tao FENG, Xiu-Qun YANG, Liang WU, Ronghui HUANG, Dejian YANG
    2020 年 98 巻 4 号 p. 735-754
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/18
    [早期公開] 公開日: 2020/04/09
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    電子付録

    Using the Climate Forecast System Reanalysis, Joint Typhoon Warning Center best track, and Tropical Rainfall Measuring Mission precipitation data, two long-lasting synoptic-scale wave trains in 2004 and 2006 are selected to investigate the atmospheric factors controlling the structures of westward-propagating synoptic-scale disturbances over the tropical western North Pacific. The essential difference between these two wave trains is found in their vertical structures. In 2004, the maximum perturbations occurred from the middle to lower troposphere with an equivalent barotropic structure; however, in 2006, they primarily occurred in the upper troposphere with a prominent tilt regarding height. Distinct configurations of the monsoon troughs, the tropical upper-tropospheric troughs (TUTT), and associated vertical wind shear caused such structural differences. In 2004, the TUTT shifted eastward, creating an easterly sheared environment to confine synoptic-scale waves in the lower troposphere. Then, the monsoon trough enhanced the wave activity through barotropic energy conversion in the lower troposphere. In contrast, while the TUTT shifted westward in 2006, synoptic-scale waves prevailed in the upper troposphere by the environmental westerly shear. Meanwhile, the disturbances developed in the upper troposphere through to the conversion of kinetic energy from the TUTT, exhibiting a top-heavy vertical structure. The coherent movement of the monsoon trough and the TUTT modulate the vertical structure and the development of the synopticscale waves.

Articles : Special Edition on Global Precipitation Measurement (GPM): 5th Anniversary
  • 山地 萌果, 高橋 洋, 久保田 拓志, 沖 理子, 濱田 篤, 高薮 縁
    2020 年 98 巻 4 号 p. 755-773
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/18
    [早期公開] 公開日: 2020/05/27
    ジャーナル オープンアクセス HTML
     全球規模での雨滴粒径分布と降水特性との関係について、全球降水観測計画GPM主衛星に搭載されている二周波降水レーダ(DPR)による観測情報を用いて調査した。卓越する降水システムの季節変化に焦点を当て、雨滴粒径分布の代表的なパラメータとして、GPM/DPRによる質量荷重平均雨滴粒径(Dm)プロダクトを統計的に解析した。通年平均のDmは一般に海上よりも陸上で大きく、降水強度(R)とは単純な一対一での対応関係ではないことがわかった。さらにDmは統計的に有意な季節変動がみられ、特に北西太平洋ではその変動が顕著であったが、R の季節変動は有意ではなかった。これは、Dmの顕著な季節変化はRの変動のみでは説明できないことを意味する。
     北西太平洋に焦点をあてて解析すると、Dmが卓越する降水システムと関連して季節変化していることが示された。夏季は中緯度の梅雨前線に伴う降水帯や亜熱帯の熱帯擾乱に代表されるような、層状性と対流性両方の降水から構成される背の高い組織化した降水システムが卓越していた。冬季になると、中緯度と亜熱帯とでDmの変化が異なっていた。中緯度では層状性降水の比率が高くて上層に固体降水を伴う、温帯低気圧性の降水システムが卓越して、Dmが夏季より大きくなっていた、一方で、亜熱帯では、亜熱帯高圧帯下の貿易風循環に伴う対流性の積雲によってもたらされる背の低い降水システムが卓越し、Dmは夏季より小さくなっていた。
Articles
  • 山口 宗彦, 前田 修平
    2020 年 98 巻 4 号 p. 775-786
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/25
    [早期公開] 公開日: 2020/05/21
    ジャーナル オープンアクセス HTML
     観測に基づくと、東京を含む日本の南海岸に接近する熱帯低気圧の数が過去40年間で増加しており、また接近時の強度が強まっている。海面水温の上昇、風の鉛直シアの弱化、さらに大気中の水蒸気量の増加により、熱帯低気圧の発達により好条件な環境場となっている。加えて、熱帯低気圧の移動速度が遅くなっており、これは熱帯低気圧による影響時間が長くなっていることを意味する。前半の20年(1980~1999、P1期間と呼ぶ)と後半20年(2000~2019年、P2期間と呼ぶ)の7~10月の環境場を比較すると、P2期間はP1期間と比べて亜熱帯高気圧の勢力が強く、西および北への張り出しが強まっている。また、対流圏中~上層において、日本の南および上空で偏西風が弱まっている。これらの環境場の変化が、東京に接近する台風を増加させ、および発達に都合の良い条件を作り出していると考えられる。地球温暖化とこれら過去40年間の熱帯低気圧の特徴の変化との関係は不明である。ただし、P1期間は太平洋十年規模振動が正の期間で、P2期間の多くは負の期間であることから、十年規模振動が接近数 の増加や環境場の変化に影響をもたらした可能性がある。
    Editor’s picks

    Yamaguchi and Maeda (2020) The above paper was press released. (25 Aug. 2020)
    Press release document (in Japanese)

  • Kai JIN, Fei WANG, Quanli ZONG, Peng QIN, Chunxia LIU
    2020 年 98 巻 4 号 p. 787-799
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/18
    [早期公開] 公開日: 2020/05/09
    ジャーナル オープンアクセス HTML
    電子付録

    Observed surface air temperature (SAT) warming at urban stations often contains both the signal of global warming and that of local urban heat island (UHI) effects; these signals are difficult to separate. In this study, an urban impact indicator (Uii) developed by the authors was modified to represent the extent to which the observed temperature from a given station was influenced by UHI effects. The Uii of a city was calculated by simplifying the city's shape to a circle. In addition, a modified Uii (MUii) was calculated by considering the realistic horizontal distribution of the urban land. We selected 45 urban stations in mainland China, along with an adjacent station for each to give a station pair. Background climate changes across each pair were near-homogeneous. Thus, differences in the trends of annual averaged daily mean SAT (Trendmean), maximum SAT (Trendmax), and minimum SAT (Trendmin) between the urban and adjacent stations (ΔTrend) could be mainly attributed to differences in MUii changes between the urban and adjacent stations (ΔMUii). Several linear regressions between ΔTrend and ΔMUii for the 45 station pairs were calculated to estimate UHI effects on Trendmean (UTmean), Trendmax (UTmax), and Trendmin (UTmin). The results showed that the mean MUii of the 45 urban stations increased from 0.06 to 0.35 during 1992–2013. Positive correlations between ΔMUii and ΔTrend for the 45 station pairs were significant at the 0.001 significance level (except for Trendmax). The average UTmean and UTmin of the 45 urban stations during 1954–2013 were approximately 0.05 and 0.11°C decade−1, respectively, accounting for 18 % and 31 % of the overall warming trends, respectively. The UTmin estimated in this study is about twice that of previous results based on regression equations between Uii and SAT trends.

Articles : Special Edition on Extreme Rainfall Events in 2017 and 2018
  • 西井 和晃, 田口 文明, 中村 尚
    2020 年 98 巻 4 号 p. 801-820
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/26
    [早期公開] 公開日: 2020/05/08
    ジャーナル オープンアクセス HTML
     2018年7月に日本において2つの極端現象が発生した。本研究では大気大循環モデル(AGCM)のアンサンブル実験にもとづき、これらをもたらした大気大循環偏差に対する海面水温偏差の潜在的影響を評価した。一つ目の極端現象は、7月上旬での西日本を中心とする豪雨であり、日本の南西にあった低気圧性偏差と日本の東にあった高気圧性偏差による顕著な水蒸気輸送がこの主要因である。全球で観測された海面水温を与えたAGCM実験は日本の東の高気圧性偏差を再現できず、このため水蒸気輸送と豪雨を再現できなかった。もう一つの極端現象は7月中下旬に日本で全国的に観測された猛暑であり、これは日本を覆う顕著な高気圧性偏差によるものである。この高気圧性偏差はAGCM実験によって高温偏差とともによく再現された。さらなる実験により、熱帯と中緯度北太平洋のそれぞれの海面水温偏差が、猛暑をもたらした北西太平洋上の大気循環の主要モードを強制していた可能性が示された。また、6月から7月にかけて持続した北西太平洋での亜熱帯ジェットの北偏傾向、及び、北半球中緯度対流圏での高温偏差傾向も、これらの海面水温偏差がそれぞれ強制していた可能性を示した。
Articles
  • 川端 康弘, 山口 宗彦
    2020 年 98 巻 4 号 p. 821-833
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/25
    [早期公開] 公開日: 2020/05/18
    ジャーナル オープンアクセス HTML
     台風進路予報における予報楕円の有効性を、マルチセンターアンサンブル手法を用いて調査した。使用した台風進路予報データは、2016~2018年の気象庁、欧州中期予報センター、米国環境予測センター、英国気象局の数値予報センターの全球アンサンブル予報である。これら4センターの全球アンサンブル予報によるマルチセンターアンサンブルは、初期値ごとに異なる予報の不確実性を、台風の進行方向に沿った成分とそれに直交する成分において、より適切に表現できることがわかった。予報円は進路予報誤差が等方的な分布であることを仮定しているが、予報楕円を導入することにより台風の移動方向あるいは移動速度のどちらに予報の不確実性が大きいか把握することができる。予報円と予報楕円の面積を比較したところ、予報楕円の面積は平均して3日先予報で16%、4日先で15%、5日先で24%減少することがわかった。予報楕円は台風の警戒領域を絞り込むことができ、防災対応・緩和策をより強化できる可能性がある。
    Editor’s picks

    Kawabata and Yamaguchi (2020): The above paper was chosen as a JMSJ Editor's Highlight. (13 Jul. 2020)
    Description of this paper 

Articles : Special Edition on Extreme Rainfall Events in 2017 and 2018
  • 廣川 康隆, 加藤 輝之, 津口 裕茂, 清野 直子
    2020 年 98 巻 4 号 p. 835-857
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/26
    [早期公開] 公開日: 2020/05/18
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    電子付録
     日本でのメソ対流系の理解を深めるために、解析雨量から豪雨域を客観的に検出・分類する手法を新たに開発し、積算降水量分布を解析雨量から評価して豪雨域の特徴を調査した。2009年~2018年の暖候期(4月~11月)における豪雨域を検出し、その形状や時間変化をもとに4種類(線状停滞型、線状型、停滞型、その他)に分類した。豪雨域は東・西日本の太平洋側で高頻度に分布し、豪雨域の約80%は6月~9月にみられ、約60%は停滞前線と台風本体にともなって観測されていた。線状停滞型として検出・分類された豪雨域の約80%は、先行研究で知られる典型的な線状降水帯事例と一致した。
Articles : Special Edition on Extreme Rainfall Events in 2017 and 2019
  • 辻 宏樹, 横山 千恵, 高薮 縁
    2020 年 98 巻 4 号 p. 859-876
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/08/25
    [早期公開] 公開日: 2020/06/02
    ジャーナル オープンアクセス HTML
     2018年7月豪雨と2017年九州北部豪雨の降水の特徴と環境場を比較した。どちらの豪雨も、梅雨末期に、台風の通過後、上層西風ジェットの南側で、上層トラフの前面において発生した。しかし、二つの事例の降水は対照的な特徴を示していた。2018年7月豪雨では、広範囲に長時間持続する、中程度に背の高い降水システムによる雨が観測された。環境場は気候値と比較して相対的に安定かつ非常に湿潤であった。朝鮮半島に存在した深いトラフは、準地衡力学的強制によって、組織化した降水システムの形成に有利な環境場を整えていた。一方、2017年九州北部豪雨では、極端に背の高い降水システムによって狭い範囲で短時間に非常に強い雨が観測された。環境場は気候値と比較して相対的に不安定かつ湿潤であったが、2018年7月豪雨時と比較して乾燥していた。朝鮮半島に存在した浅いトラフは、トラフ自身に伴う寒気によって大気を不安定化させていた。
     2018年と2017年の二つの豪雨事例における特徴の対比は、先行研究Hamada and Takayabu(2018, doi:10.1175/JCLI-D-17-0632.1)による極端降水事例と極端対流事例の統計における特徴の対比と類似している。二つの豪雨事例における気温と比湿の気候値からの偏差は、先行研究が上位0.1%の極端事例の統計であるにもかかわらず、先行研究の統計解析の結果よりも数倍大きかった。この結果は、2018年7月豪雨が極端降水事例の極端現象であったことを示唆しており、2017年九州北部豪雨は極端対流事例の極端現象に相当する事例であったことを示唆している。
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