気象集誌. 第2輯
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太平洋十年規模振動と地球温暖化の影響による9月の中緯度帯における台風の移動速度の鈍化
山口 宗彦前田 修平
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2020 年 98 巻 6 号 p. 1321-1334

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抄録

 地球温暖化はすでに世界中の気象・気候に影響を与えており、気候変動が熱帯低気圧に与える影響を理解するために様々な研究が行われている。熱帯低気圧の移動速度が遅くなるとその影響を受ける時間が長くなることから、熱帯低気圧の移動速度は特に重要な要素である。本研究では、観測データに基づいて、北西太平洋中緯度において、熱帯低気圧の移動速度が過去40年間で9月に著しく低下していることを明らかにした。過去の実際の温暖化がある気候条件と、温暖化がなかったと仮定した気候条件のそれぞれのシミュレーション結果に基づくと、太平洋十年規模振動と地球温暖化が移動速度の鈍化の主な原因であることがわかった。この二つの要因は、日本の西側で偏西風帯に高気圧性偏差を生じさせ、この高気圧性偏差が緯度方向のジオポテンシャル高度の勾配を緩め、熱帯低気圧を移動させる環境風を弱めている。さらに、将来の温暖化を想定したシミュレーションでは、地球温暖化により熱帯低気圧を移動させる環境風が一層弱くなり、秋の熱帯低気圧の移動速度が遅くなることが示された。

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© The Author(s) 2020. This is an open access article published by the Meteorological Society of Japan under a Creative Commons Attribution 4.0 International (CC BY 4.0) license.
https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/
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