気象集誌. 第2輯
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20kmメッシュ大規模アンサンブル実験を用いた北東日本における極端低温日の将来変化予測
川添 祥藤田 実季子杉本 志織岡田 靖子渡辺 真吾
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2020 年 98 巻 6 号 p. 1305-1319

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抄録

 本研究では、地球温暖化対策に資するアンサンブル気候予測データベース(d4PDF)による大規模アンサンブル実験を使用し、北東日本で夏季(6月-8月)に発生する極端低温日(ECD)の将来変化を自己組織化マップ(SOMs)分類で検証した。将来のECDに対する将来気候変化の影響を調べるために二つのSOMs、すなわち、気候モデルの再現性の検証においてはJRA-55とd4PDFの海面気圧で学習させたSOMs、気候変動の影響評価においてはd4PDF過去、2K昇温、4K昇温実験の海面気圧で学習させた“master”SOMを作成した。再現性検証に用いたSOMsからは、JRA-55とd4PDFとの間で夏季の気候的な循環場及びECDが同様の頻度で出現した。さらに、ECDが高頻度で発生したノードにおいて地上気温偏差と地上水平風を合成し比較したところ、全抽出日およびECD発生日の双方においてそれぞれ良く再現されており、特にECDの発生要因としては高緯度から北東日本に移流してくる強い南西風(ヤマセ)の出現が確認された。“master”SOMを用いた将来変化の検証では、ECDの発生に好都合な循環場の変化は2K昇温実験よりも4K昇温実験で顕著にみられた。ECD発生頻度の将来変化として、東日本周辺にみられる強い低気圧とやや強いオホーツク海高気圧が同時発生しているパターンでは増加傾向を、非常に強いオホーツク海高気圧または太平洋高気圧の西への張り出しが卓越するパターンでは減少傾向を示すことが示唆された。ECD強度の将来変化を明らかにするために、下層大気の温度移流についても調べた。循環場の違いによってECD強度が異なるものの、過去・将来実験共に、ECDの発生しやすい循環場においては非常に強い寒気移流が検出される。しかし、将来気候で見られる寒気移流は現在気候と比較して弱く、それに伴いECD強度も低下する。これは将来東日本周辺で弱化する温度勾配に起因する。

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© The Author(s) 2020. This is an open access article published by the Meteorological Society of Japan under a Creative Commons Attribution 4.0 International (CC BY 4.0) license.
https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/
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