気象集誌. 第2輯
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Articles: Special Edition on Extreme Rainfall Events in 2017 and 2018
2017年および2018年の7月に日本において発生した豪雨期間の降雨特性およびその環境条件
鵜沼 昂竹見 哲也
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2021 年 99 巻 1 号 p. 165-180

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抄録

 2017年および2018年の7月、日本において豪雨が発生し、甚大な被害が生じた。本研究は、現業気象レーダーおよびメソスケール解析値を用いて、2017年・2018年の豪雨事例を対象に、その降雨特性と環境条件を調べた。自動アルゴリズムにより、降水雲システムを1つの弱い降雨タイプ(降雨強度が10mm h-1未満)と4つの強い降雨タイプ(降雨強度が10mm h-1以上)に分類した。強い降雨タイプは、準停滞性対流群(QSCC)・伝播性対流群(PCC)・短寿命対流群(SLCC)・その他の未組織化の対流雲の4つである。弱い降水による全降水量に対する寄与は多くの領域で支配的であるものの、豪雨が発生した地域では強い雨による降水量の寄与は弱い雨の場合よりも大きくなることが分かった。強い降水タイプの中では、SLCCによる降雨がQSCCやPCCによる降雨よりも多く、一方、未組織化対流雲による雨量の寄与は小さい。解析結果から強調すべき点は、組織化した降水系(面積が200km2以上)による強い雨の寄与は豪雨発生域で大きくなる、ということである。各降水タイプの発生環境条件を調べたところ、水蒸気量の違いという点で2017年の場合よりも2018年の場合のほうがより不安定であり、時系列で見ても、降水タイプと可降水量・鉛直シアーといった環境条件との間で明瞭な関連性があることが分かった。可降水量と中上層の相対湿度の双方が、本研究で対象とした豪雨の発生環境条件として重要であることが示された。また、降水タイプの特性と環境条件をQSCCの気候値と比較した。

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© The Author(s) 2021. This is an open access article published by the Meteorological Society of Japan under a Creative Commons Attribution 4.0 International (CC BY 4.0) license.
https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/
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