気象集誌. 第2輯
Online ISSN : 2186-9057
Print ISSN : 0026-1165
ISSN-L : 0026-1165
Article : Special Edition on DYAMOND: The DYnamics of the Atmospheric general circulation Modeled On Non-hydrostatic Domains
全球雲解像モデル実験と衛星観測による熱帯域における地上降水強度の半日周期変動について
井上 豊志郎Kavirajan RAJENDRAN佐藤 正樹三浦 裕亮
著者情報
ジャーナル オープンアクセス HTML
J-STAGE Data 電子付録

2021 年 99 巻 5 号 p. 1371-1388

詳細
抄録

 3.5㎞メッシュの非静力学正20面体格子大気モデル(NICAM)による2006年12月26日―31日のシミュレーション結果を用いて、熱帯において一日二回のピークを示す降水強度の半日周期について解析を行った。結果を熱帯降雨観測衛星(TRMM)に搭載された降水レーダ(PR)及びマイクロ波放射計(TMI)で観測された冬季17年間の気候値、同一期間に解析されたGSMaPデータ、さらに静止気象衛星で観測された赤外画像データと比較した。

 陸域であるアフリカ南部とアマゾン域に注目して調査を行った。この領域においてNICAMは一番強い午後のピーク(第一ピーク)と二番目に強い早朝のピーク(第二ピーク)をとらえた。このようなピークはTRMMでも同様に観測されている。PRの観測によると、第一ピークは対流性降水、第二ピークは層状性降水が主となっている。単純に降水強度によって対流性及び層状性降水を分類した場合、NICAMでは対流性降水が一日中卓越するとともに降水強度は全般的にPRの降水強度よりも強い。一方、深い対流雲(DC)に注目した解析によると、NICAMが再現した降水強度の第一ピークはDCの数が多い時間帯に対応し、第二ピークはDCのサイズがほぼ最大の時間に対応しており、静止気象衛星の観測結果と整合的である。但し、NICAMでは二つのピークの相対的な大きさを十分に表現できず、層状性降水による寄与が過小評価されている。

 改善の余地はあるものの、NICAMのような高解像度の全球非静力学モデルは深い対流の半日周期を表現でき、低分解能の大気大循環モデルの限界を克服できる可能性があることを今回の研究は示している。

著者関連情報

© The Author(s) 2021. This is an open access article published by the Meteorological Society of Japan under a Creative Commons Attribution 4.0 International (CC BY 4.0) license.
https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/
前の記事
feedback
Top