気象集誌. 第2輯
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大氣の亂流擴散現象について(第1報)
井上 榮一
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1950 年 28 巻 12 号 p. 441-456

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抄録
亂流擴散は亂流場め中に存在する亂子(Turbulon)の不規則な運動によつて起るものと考えられる.大氣の亂流場は本來非等方性であるけれども,地表面から十分離れた所では二つの二次元等方性亂流場の組合わせによつて現わされるものと考え,先ず二次元等方性亂流場の構造を求めた. Weizäckerにならつて,圓柱状の亂子を考え,その相互作用として生ずる亂子粘性による摩擦力と,亂子粘性のために起るenergy逸散が亂子の階級に無關係であるということゝの假定から,亂子の大きさ〓と亂子速度Vとの關係が求まる.これは三次元の場合と同様で,波數については-5/3乘則として亂子スペクトルが導かれる.亂子は夫々の階級によつて定まつた壽命時間τ (~〓/V)をもち,壽命時間(或は固有週期)についての亂子スペクトル函數はF(τ)~const.となる.
亂流擴散を記述するLagrange相關係數R(ξ)はF(τ)と關係づけられる.この結びつきはEuler相關係數R(t)と通過時間T(或は相對週期,~〓/U)についてのスペクトル函數F(T)との結びつきと同様である.先に求めたF(τ)から, R(ξ)=1-(ξ/τ0)が得られる. τ0は最大亂子の壽命時間であり, (ξ/τ0)の大小によつて判然と區別される二つの性質の異つた領域がある.
R(ξ)とR(t)との關係,〓=ν/Vによつて與えられる最小亂子(the smallest turbulon)とTaylorの意味の最小渦(the smallest eddy)λη及びλとの關係が求められ,特にληとλとの相互關係についてはTaylorと異つた見解が得られた.
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© 社団法人 日本気象学会
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