抄録
接地気層の風速・気温の平均鉛直分布について,モーニン・オブコフ(M-O)関数が導入されて以来,多くの理論的研究がM-O理論の発展,M-O関数の一般式を求めることに努めた。本文では,これら諸理論の本質的差異を明らかにし,また実測の解析結果をも考えながら,理論の再検討を行なった。その結果,
(1)諸理論は,M-O理論を本質的に一歩発展させたものとはいい難いこと,すなわち,具体的には,気層の安定度の全域にわたるものではなくて,M-O の結果を補間したものと同程度になるか,または,あまり認めにくい強い仮定のもとに一般式を求めていること,
(2)混合距離について形を特別に仮定しなくとも,かなり弱い制限のもとにM-Oの結果を得ることができること,
(3)中立成層付近においてなされた今までの多くの実測解析は,対数則よりのずれを一次形式に適合させたものであって,中立付近のM-Oの結果を検証するものではなく,M-Oの結果を直接検証しようとしたものも,M-Oの相似の仮定を十分確かめるためには不十分であること。さらに現在の実測の段階では,安定度の全域においてはもちろん,中立付近においても,M-O理論を十分検証することはむずかしそうであること,
(4)付録において引用した最近の実測によると,かなり不安定な場合の傾向はM-Oの結果と一致しない。これは,多少の修正のもとに,M-O理論によってある程度説明しうることなど,以上の事柄が示されている。