気象集誌. 第2輯
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プリミテイブ方程式を用いた台風の発達の数値計算
山岬 正紀
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1968 年 46 巻 3 号 p. 178-201

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抄録

正野•山岬(1966)の議論に基づいて,台風の発達を再現するための数値実験をプリミティブ方程式を用いて行った。積雲対流の熱的効果は大山(1964)によって提案された方法でパラメーター化した。地表摩擦の効果は最下層に適用する運動方程式を通してモデルに含めてある。
収斂空気の混合比が20.49/kg,放出される潜熱の43%を対流圏下層に,57%を上層に与えるケースでは,8日後に中心気圧が雌低となり,その後中心から埋積が起っていく。このケースで得られた擾乱の構造は実際の台風の構造とかなりよく似ている。傾度風バランスからのずれは対流圏上部の中心から少しはなれた所で大きい。又放出された潜熱のうち運動エネルギーに変換する割合は時間的に増大し,その値は約3%になる。
次に,収斂空気の混合比,放出される潜熱の鉛直分配,大気の垂直安定度,地表摩擦係数,コリオリのパラメーターなどを変えることによって,これらの要素と,モデル台風の発達,構造との関係を調べた。対流圏上層に70%の熱を与えるケースでは発達しない。発達するためには,下層への熱分配の割合はある程度以上に大きくなければならない。又発達の速さは,下層の安定度に強く依存する。コリオリのパラメーターが小さいほど,台風の水平スケールは小さい。

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