気象集誌. 第2輯
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大気中の細胞状対流に及ぼす境界層の熱学的な効果について
佐々木 嘉和
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1970 年 48 巻 6 号 p. 492-502

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抄録

人工衛星から観測された細胞状対流が偏平(水平のスケールが垂直のそれより大きい)である.その一つの説明になりうると思われる理論を述べる.
下から熱せられた水平流体層の中で伝導から対流への転移を記述したレーリーの対流理論に,一定温度でなく,境界層の熱学的過程より規定される境界条件をおきかえて試べた.
ここでいう熱学的条件は温度と垂直温度傾度の線型結合によって表わされる.力学的境界条件は"Slip"と"NonSlip"の二つの極端な場合をとった.
支配方程式に対する固有値と転移点で数値的に解いた.結果は存在する固有値は無次元数γの値により大きく影響されることがわかった.このγは上下の境界における垂直温度傾度の項と温度による項の比で無次元化されたものである.γが零に近づくに従い,臨界レーリー数 Rac は減少し約120位の値に漸近する.但し最低次の固有値はγにより大きく変るが,他の固有値はγにより影響されることは少ない.対流層の深さdと対流細胞の水平波kで定義される無次元数α,つまりkd,はγが小さくなるに従って同じように小さくなる.αは対流細胞の垂直と水平のスケールの割合に比例するものであるから,上の結果はγが小さいとき偏平な対流細胞がおこりやすいことを示している.更に,レーリー数は臨界値近傍で,一様になる傾向があり,それは対流細胞の水平スケールの大きさが,ある値を中心に色々の大きさをとりうることを示している.
力学的境界条件,つまり slip あるいは non-slip の条件は上の熱学的境界条件に比べ影響が小さいこともみつけられた.

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