1971 年 49 巻 3 号 p. 191-214
雷雨の運動機構を調べるために,1964年4月3日のレーダーエコー,β-観測網のデータと上層観測の精密解析を行なった.調べた雷雨の一つは,平均流の方向に対し左にかなりずれて進み,又一方他の雷雨群はいくらか右にずれて進んだ.左にずれた雷雨は,レーダーエコーの強さの分布,成長のしかた,循環のしかたの点で,右にずれた雷雨と対称的な形をしていることがわかった.同様な対称性は,地上の気圧や風の分布にも見出された.左右に分れて進む二つの雷雨に特に注目して比べてみた.左に進んでいる雷雨のエコーは,つねにエコーの主要部の左側で発達,成長して進んでいることを示していた.地上の低圧部と収斂域は雷雨に入りこんでくる下層流入気流の下で,雷雨の左側の象限の前面に存在した.右に進んだ雷雨については,同様な性質(対称的であるが)右側後方部でみられた.これらの解析結果はcontinuous ProPagationとよばれている連続的な発達一伝播による雷雨の移動の機構を支持してる.観測された雷雨の移動を説明するには,下層の運動量保存則,DragやLiftに付加えてcontinuous propagationの機構が重要であることを示していることがわかった.